おっ、久間十義が鉄道サスペンス?! と手に取ってみたら、経済小説でした。
帯にあるとおり前半はまさしく「ITベンチャー興隆期を背景にした経済青春小説」。舞台はもちろん世紀末東京。ほかにこういう「青春小説」を知らないので新鮮で引き込まれました。実名もばんばん出てきて、ある時代のある分野の空気感というものをたっぷり味わえます。
後半になると人間が引っ込み「経済」そのものが前面に出てくる感じ。実際にあった事件を彷彿とさせるマネーゲーム的な騒動や利権の問題が、作者なりの批判的立場から描かれます。
作品自体、第一部快速、第二部特快、第三部急行、第四部特急というふうに、章立てされています。当然意図的なのでしょうが、経済は待っちゃくれないぜとばかりに、加速度的に小説の規模も膨らんでゆきます。いつまでも出だしの牧歌的な「青春小説」としては読ませてくれません。
後半の「経済」の部分は自分は知らないことが多いので読み応えがありましたが、そういうのは先行作品も多そうだし、小説的には「青春小説」のまま行った方がおもしろかったのでは、と思います。
これから経済小説でも読んでみるかという人にはお薦めしにくいです。久間節とでもいうような、独特の講談めいた?語り口は慣れないと読みにくいかも。