数の中にはいろいろ不思議なものがあります。特に、数学的にでてくる数には1000年級のドラマと知恵が堆積しています。ギリシア文字を特別の名前として与えられたような数には、ぎっしり中身が詰まっています。
「πの伝記」に続いて、今度は、黄金数 φ(ファイ)です。宇宙物理学者が書いた黄金比、という対照がまず期待をもたせます。
数や幾何の歴史を紐解いたあと、黄金比という言葉の所以でもある”美的感覚”とφの関係を、美術、音楽、詩歌、建築の実例を使って検証する中盤の話を読んでいると、かつて数学と芸術が密接に関係していたことを知らされます。ただし、φが本当に人間の感性に響くのかどうかは本書を読んで確認したほうがいいでしょう。
フィボナッチ数列(前2項を足したものを次の項にする数列)とφの関係は意外ですが、ひとたび知れば意味の奥行きを理解しやすくなります。
後半話は一気にふくらみ、ペンローズのタイル(5回対称性と長距離秩序はもつが周期的でない平面分割)、フラクタル、インフレーション宇宙、ベンフォードの法則(数字の発生確率の偏り)と続いて、最後は数学と科学の根源の議論に言及して終わります。著者の次作の翻訳が待ち遠しく感じます。
古代からの関心事が現代の最先端科学の隅々にまで関係していることを知ると、世界の見方が変わってきます。このようなストリングをしるとますます個々の要素への関心をかきたてられます。
次は、e(自然対数の底)にチャレンジしようと思います。