設定は大変おもしろしいのですが、この著者にしては、ちょっと読みにくいかな、というのが第一印象でした。
主人公の就職浪人、隼人と、幼なじみで近所の香のお店のあとつぎ楓太のふたりが、へぼ探偵団のようなものを結成し〈黄金坂〉の住民たちのあれこれのトラブルにかかわってゆく、という連作です。
第一話は野良猫たちにスプレーで落書きがされる事件、第二話は、二軒のビストロどうしが、ムースの元祖を名乗る権利をめぐって対立、ギャルソンレースで決着をつけようとする話、第三話は〈黄金坂〉生え抜きの代議士が地上げ運動にかかわりかけている謎ですが、第四話と、締めの話は、隼人や楓太自身の友情のきしみや不信感がおもてに出たもので、全体を枠物語としてくくっている、同級生の朝美の事故死が再度浮上。
枠物語というのは一話より前、冒頭に「わたし、人を殺した」と、隼人が朝美に告げられる回想シーンが投げ出されており、最後にどう、風呂敷がたたまれるのかなと期待しましたが、ミステリというほどの謎でもなく、隼人、楓太、そして仲のよかった仲間の青春群像物語で終わってしまいました。
「坂は真ん中よりちょっと手前が一番きつい」という言葉が何度か出てきますが、〈黄金坂〉というレトロな場所と人物たちの中での、ニートな主人公ふたりの成長物語でしょうか。
魅力はやはりこの〈黄金坂〉という場所と、おかしな住人たち(占いの黄婆婆とか、ジャージ姿の学生が大好きな、ジャバ・ザ・ハットに似た芸者のすずめさんとか、庭にいろいろな「スタチュー」を据えたがる隼人の母とか、HOLLOWという昼専門立ち飲みバーのマスター、イズミさんとか)の存在ですが、読みにくかった理由は、これが携帯で配信されていた小説だったからなのか、描写やストーリーラインが一気に流れてゆかず、細切れに情景が並べられて散漫な感じ、キャラクターもストーリーも少し生煮え感がありました。
シャープで生きのいい、いつもの著者のスタイルで、書き下ろしで、この続編を書いてもらえたら、と希望します。