そのストーリー自体は勧善懲悪パターンで、いたってシンプルだ。金色の仮面をつけ、大胆不敵な手口で日本中の名だたる古美術品を次々に狙っていく謎の怪盗・黄金仮面。命の危険にさらされながらも、その黄金仮面に立ち向かう名探偵・明智小五郎。両者の一歩も譲らない、くんずほぐれつの対決がスリリングな冒険活劇調に語られていく。掲載された雑誌が道徳性を重んじていたこともあってか、乱歩独特の猟奇性は影を潜め、児童文学的色合いが濃い。乱歩自身も「私の長編作品の中でも、最も不健全性の少ない、明るい作」と書いている。
「白髪鬼」は、自分を殺そうとした者たちへの復讐譚。大牟田子爵は、ある時断崖から転落してしまう。九死に一生を得た彼は、転落を企てた人間がいままで信じ切っていた人間たちと知り、彼らに復讐を誓う。「黄金仮面」とは違って、復讐の方法やその描写に探偵小説的な趣向と乱歩ならではの残虐性とが盛り込まれている。ほかの2編含め、上昇気流に乗りつつある作家特有の勢いが、行間のあちこちから強く感じられる作品ばかりだ。(文月 達)
登録情報
|
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|