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犯罪記録や裁判について新聞に寄稿していたルルーではあったが、ミステリは本作が始めての作品だった。著者は執筆に当たりポーやドイルなどの先達によるミステリに影響を受け、しかしそれらを上回る論理的な密室殺人事件をここで作り上げようと考えた。著者からすれば二作家による密室事件は、トリックとして不十分なもので、特に解明にあたって《密室》という物理条件を翻してしまうことが、アンフェアと見えたようだ。この逸話は有名で、著者自身が残した熱っぽい言葉によっても確かめることが出来る。
物語は長編のミステリとしてよく書き込まれている。推理のために必要な描写以外にもサスペンスやロマン、犯罪の裏に潜むドラマの気配など多くの要素が、重層的にくみ上げられている。長編推理がまだそれほど一般的でなかった時期に、この完成度は評価できるだろう。
しかしやはり全体的なまとまりとしては幾分散漫な印象もあり、特に中間部で視点を変えるなどの手法を使っている部分では、テンポ感に乱れが出るのが気になる。第二の事件では仰々しい表現や感嘆符を重ねドラマティックに描写しようとするが、この時視点となるルールタビーユの意図が掴めないので、読者はサスペンスを感じにくく冗長に思う。
またルールタビーユが何度も口にする《黒衣婦人の香り》と言う台詞が本作の中では意味不明のままで、次作に持ち込まれていくのもスタイルとして疑問がないでもない。
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