本作が公開されてからもう数十年は経つというのに、今回初めてDVDで鑑賞。
ホラー物が苦手な私だが、いじめや報復のショッキングなシーンよりも、さらに衝撃的なキャリー母娘のドラマに引き込まれてしまった。
キャリー母娘を演じた二人の女優の素晴らしい演技が、この映画の核。
キャリーを演じたのはオスカー女優のS・スペイセク。リー・ストラスバーグのもとで演技を学んだ演技派の女優で、アカデミー賞に何度もノミネート、本作でも母親役のP・ローリーと共にアカデミー賞にノミネートされた。
本作の数年後、S・スペイセクは「歌え!ロレッタ愛のために」で主演女優賞獲得。
映像特典でも語られていたが、本作のヒロイン役の候補は他にいたが、S・スペイセクが熱意をもってオーディションに臨み、キャリー役を獲得したとのこと。
スペイセクの情熱が、クライマックスの怒りの爆発の表情に集約されていると思った。
また、キャリーが母親の愛を渇望するシーンは、あまりにも切なくて胸を打たれた。
母親を演じたP・ローリーは、アクターズ・スタジオ出身の演技派女優。P・ニューマンと共演した「ハスラー」でオスカーにノミネートされた後、女優を引退、本作で見事にカムバック。
怪演ともいえる素晴らしい演技にひきこまれた。
敬虔なクリスチャンというよりも、狂信的でイカレた母親は、娘のキャリーを自分の絶対的な支配下において宗教の名のもとに虐待をし続ける。社会的にこの親子が異質なものとして扱われ疎まれ、キャリーが学校内で「いじめ」にあう理由の一つが、母親の宗教に対するスタンス。
母親が「キャリーの体が大人になり、女になること」を忌み嫌う理由が、父親不在の理由によって明らかになり、ラストの母親の独白で一層理解が深まった。宗教的な観点から「性を罪悪」ととらえる心理の他にも、夫に捨てられた事によって、世間から嘲笑の対象になり続けた女の哀しみが伝わってくる。
性的な欲望を抑制し続け、女と逃げた夫への不信から娘を支配する母親を演じた、P・ローリーの演技のすさまじさに脱帽。各シーンで声色・表情の使い分けは鳥肌モノの第一級の演技だった。
P・ローリーの恍惚とした表情とキリスト像の相似、このシーンに至るショッキングな映像は、ある日本の監督作品の模倣であるとインタビューで語られている。
プロムの晩、キャリーがすさまじいパワーで復讐をとげていくが、このシーンだけの印象で、今まで「ホラー映画だから」と食わず嫌いをしてきた事を後悔した。
冒頭のシャワー・シーンの音楽と映像が官能的で美しい。音楽を担当したのはN・ローグ監督に見出されて「赤い影」でキャリアを出発させたP・ドナジオ。以後B・デ・パルマ監督と名コンビになる。
劇中で1か所だけ首をひねったのは、シャワー室でのいじめ。同性から見ると「?」のいじめの行動。
後に、初潮や性について知らなかったキャリーと、母親の異常性が伝わるインパクトがあるシーンにつながっていくことで、納得できた。
B・デ・パルマの出世作であり、S・スペイセクをはじめとする当時の若手俳優達(ジョン・トラボルタ)のキャリアの分岐点ともいうべき作品。P・ドナジオの音楽との融合、本篇の映像も美しい。