戦後の混乱期を脱しつつ安定・成長へむかおうとする世の中で、坊や哲は、自分の決めたルールに従い、なんとかバクチ一本で生き抜こうとあがく。そんな彼が向かう先は大阪である。そこで彼は、東京のバクチ打ち達とは趣の異なる、一癖も二癖もある人物達を相手に、あらゆる知恵を絞り対決の場に挑む。
最後の勝負の場は「寺」であり迎え撃つのは僧侶達である。そこで繰り広げられるのは、“強きを助け弱きをくじく”という壮絶な闘いである。煩悩にまみれ、世俗的な人物として描かれる僧侶達の姿がいい。中でも住職である老師は、この作品に登場する人物の中で最も人間的かもしれない。
何度読んでも飽きることがない、日本が誇るエンターテイメント小説である。「青春編」に始まったこのシリーズは、この「風雲編」を経て「激闘編」「番外編」と続き、そして本当の番外編といえる「新麻雀放浪記」で完結する。この「風雲編」以降の作品には、戦後の混乱期を脱し、安定・成長へ向かう時代が到来、坊や哲達とは考えも生き方も異なる新しいタイプのギャンブラーが登場する。そんな彼らと、古い世代となってしまった坊や哲の闘いが描かれている。
作品の内容とは関係ないが、やはり、阿佐田哲也の作品のカバーは黒鉄ヒロシの絵が最も似合う。阿佐田哲也の作品の世界にピッタリの絵であるのと同時に、作品の主題を明確に表現している。