坊や哲、ドサ健、出目徳…彼らは戦後の混乱期をギャンブル一本で生き抜こうとするアウトローである。しかし、社会的にはそうでも、彼らは自分の決めたルールを愚直なまでに守り、決して生き方を曲げようとはしない。この小説にはそんな男達の生き様があますところなく描かれている。主人公達ばかりではなく、脇を固める人物達も知恵を絞り、彼らなりの哲学を持って、混乱した世の中を生き抜こうとする。登場人物全てが躍動感に溢れている。そんな彼らが、あらゆる知恵を絞り全身全霊をかけて闘う姿は圧倒的である。
読み進むにつれて、きっと彼らの世界に引きずり込まれ、自分の姿を登場人物の誰かに重ね合わせて読むことになるはずである。何度読んでも飽きることがない、日本が誇るエンターテイメント小説である。
このシリーズは、本作「青春編」に始まり「風雲編」「激闘編」「番外編」と続き、そして本当の番外編といえる「新麻雀放浪記」で完結する。これらの作品には、戦後の混乱期を脱し、安定・成長へ向かう時代が到来、坊や哲達とは考えも生き方も異なる新しいタイプのギャンブラーが登場する。そんな彼らと、古い世代となり自分の決めたルールでは生き難くなっていく坊や哲の闘いが描かれている。そして、「青春編」で登場した主な人物は、いずれかの作品に印象深い姿で登場してくる。「青春編」を読んで満足したならば、是非続編も読んで欲しい。
作品の内容には関係ないのだが、やはり、阿佐田哲也の作品のカバーは黒鉄ヒロシの絵が最も似合う。阿佐田哲也の作品の世界にピッタリの絵であるのと同時に、作品の主題を明確に表現している。