本書は1995年のテキスト『
文化麺類学ことはじめ』の改題。
「世界各地で、どのような麺が食べられているのか、それらの麺は、いつ、どこから、伝わって
きたものか。麺食の文化をかんがえるうえで、もっとも基礎的な情報である麺の起源と伝播に
ついての知識がほしかったのである。ところが、そのような好奇心にこたえる書物をみつける
ことができなかった。しかたがない、それでは自分で調べてみるか」。
基本的に中国で単に「麺」と記せば、それは小麦粉を表し、「餅」といえば「コムギ粉である
麺を原料としてつくった食品」を指す。
そんなややこしい話からはじまって、食べ歩きと呼ぶには時にあまりに過酷な、世界各地に
おけるフィールドワークの経験を織り交ぜつつ展開される、筆者曰く「『世界の麺の文化史』に
ついてのべた最初の本」。
なぜに本書における筆者の試みが世界初たりえてしまうのか、は実際にこのテキストを
読んでみれば容易に理解される。
なにせ史料の数が圧倒的に不足しているのだ。それゆえに、限られたヒントから構築される
仮説は、どうしてもあやふやなものとならざるを得ない。説を展開しようとすれば、時に多少
強引であらねばならない。参照可能な史料の不足は筆者の怠慢に由来するものではない、
事実、本書の中に筆者の不誠実を感じさせるものは何もない。
そしてまた、麺のルーツを問おうにも、麺の定義ひとつにも悩まされてしまう、というのだから、
ことはますます複雑さを増す。
面白い本には違いない。情報量は豊かだし、単純に世界グルメ紀行としても楽しめる。
ただし、私個人としては何よりも史料不足の壁が強烈に印象に残った。