この本は、単なる映画のフォット・ブックではなく、「新参者」「麒麟の翼」に登場する人形町、小伝馬町、日本橋界隈の店などが細かく紹介されていて、映画の世界に浸りながら、下町の情緒も楽しめます。また、映画に登場する人形町界隈のいろいろな店を訪れたり、日本橋七福神巡りをするのにもとても実用的です。ちょうど、映画の公開前に手にして、一通り読んで映画を見た後、実際に本を頼りに人形町、小伝馬町、日本橋界隈を歩きました。立春の日だったので七福神も巡りました。中でも、毘沙門天を祭る末廣社が、こじんまりとした中にも土鈴や絵馬,熊手などもあってとても印象に残りました。事件の鍵になる折鶴の小津和紙は、江戸の伝統工芸のよさがわかり、博物館も勉強になります。人形町界隈の店は、玉英堂、鳥忠、草加屋、双葉、亀井堂、ゆうま、ちどり屋などをまわりましたが、阿部寛さんが"おみや"としておすすめの鳥忠の親子焼きはとくに絶品でした。映画の冒頭でも登場する水天宮前のcaffe dolceは窓からの眺めも良く、ここで、田中玲奈さん扮する金森先生と加賀が話をしていたんだなあと映画のワンシーンを思い出しながら、午後のひと時を過ごすことができました。本には紹介されていませんが、甘酒横町にある「岩井つづら店」は江戸末期の創業で東京で唯一今でもつづらを作っているところで、興味があればちよっとのぞいてみるのもいいかもしれません。下町の風情を楽しんだ後、もう一度映画を見る機会がありました。「麒麟の翼」は、映画のために書かれた小説を見事に映像化していて、家族の絆や子を思う親の心を描きながら、人の心に秘められた真実に迫ろうとする阿部さん演じる加賀の姿に誰しも共感します。希望と祈りを込めたラストシーン、心に傷を負いながら強く生きることを決意して、新垣結衣さん演じる香織は故郷の福島へ帰り、麒麟像の上に広がる空から大俯瞰で映し出される東京の街。これからの日本の再生への願いも込められている気がしました。