この作品は今の映画が忘れているエンターテイメントを全て盛り込んだある意味傑作だろう。時代劇なのに今風(当時の)の歌を唄ったり、外来語(「ロマンティック」などの横文字)を使ったり、武家と商人の関係も無茶苦茶とか時代考証にうるさい人とかにはむかないかも知れないが、とにかく何でもありと考えれば素晴らしいエンターテイメントで、歌が古いかもしれないが十分に楽しめ、元気が出る作品だ。
主役はやたらとモテる若き片岡千恵蔵(3人の女性の気を引く色男の役)になっているが、話は志村(志村喬)とお春(市川春代)親子、それに絡むお富(服部良一の妹の服部富子)が中心の時代劇ミュージカル(片岡千恵蔵の歌は吹替えらしいが、その他の人は本人の声らしい)。
1939年というナチス・ドイツがポーランドへ侵攻した年に作られた作品としては、戦争の影も見えないところがある意味当時のまだ余裕のある日本を表しているのか。
「ななな何でしょ・・・」や「さーてさてさてこの茶碗」、「ぼーくはわかーい殿様」など妙に耳に残る歌も多いし、ディック・ミネの元祖バカ殿も最高。お春ちゃんの「チエ〜」というわざとらしい舌打ちも後をひく。千恵蔵の殺陣もあり、ラブロマンス、コメディもありで何でもありの戦前のザッツ・エンターテイメント。マキノ正博監督の懐の深さを思い知らされる凄いエンターテイメントだ。
DVDとしても曲ごとにシーンを再生できるメニューもあって色々でも楽しめるものとなっていてうれしい。