日本の妖怪の基本形を作った画家の一人といわれる鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪画集全点収録!という小さいけれどお買い得な画集である。でるわでるわ、怖いもの、可愛いもの、可笑しい物、ただただ不思議なもの、と二百以上の妖怪がひしめきあって、あちこちめくって楽しめる一冊。
「猫また」や「河童」など、確かに我々の思い描く「基本形」のようなものから、「わいら」「うわん」など、「すみません、説明がないんでなんだかわかんないんですが・・」といいたいようなもの。4番目の画集「百器徒然袋」あたりになると、画家のお遊びの色が濃くなったのか、琴や鞍、瀬戸物が化けたものなど、可愛い漫画にしかみえないものも出てくる。
「今昔画図続百鬼」の一枚目「逢魔が時」は、塔のそびえる街並みの上空を怪しいものが過ぎていく図であるが、一寸心に残った一枚である。この「怪しいもの」の姿は何故か「入道雲に夕陽が陰影を与えればこのようにみえるかも」とおもわせる姿をしている。夕ぐれの空に何を感じるのか、「怪しいもの」を生み出す心はこんなところにあることを教えてくれる。
最初の収録画集「画図百鬼夜行」の跋文に「詩は人心の物に感じて声を発するところ、画はまた無声の詩とかや。」とあるが、流石に狩野派に習った絵師、そう思って見直すとごちゃごちゃと書き込まれただけのような画にも、描き手の詩心がみえるような気がする。
「画はまた無声の詩とかや」。この味わい深い一言で、一段と画集の拡張があがって感じられた。
文庫版なので当然縮小されており、その分国書刊行会の発行した画集よりは迫力は減ってしまうが、あの「大きさ」でこの「数」をみるくどさは薄められてかえってよいかしれない。