「水谷」が第一級の鮨店であることには、異論はない。
水谷八郎氏の語りもまた、うそ偽りない、飾ったものでないことも、確かであろう。
ただ、この本は労作ではあるが、早川氏の才能というかセンスを、私はあまり感じることができないのだ。
優れた鮨を12ヵ月食べ、美しい写真を撮り、水谷氏の話を体裁良くまとめただけ、って印象なんだな。
早川氏独自の視点のようなものが、ほとんど感じられない(もちろん、これだけ鮨を食べ込んでいるのだから、並の人間より知識がはるかに豊富なことはわかるが)。
巻末の「水谷八郎物語」にしても、早瀬圭一氏の「鮨を極める(鮨に生きる男たち)」とほぼ同様の内容で、しかも早瀬氏の文章の方がはるかに「読ませる」のである。