お鮨屋さんで人間力というと、一瞬何のことだろうと思うが、読めば見事に納得。カウンターを隔てて職人と客が向かい合い、鮨を通じてコミュニケーションを図る。そして、カウンターには知らないどうしの客が座り、そのそれぞれが職人とコミュニケーションを図る。つまり、職人はその空間にいるすべての人を上手くケアし、最高の時間を過ごしてもらうように気を配らないとならないのだ。しかも、職人は、鮨を握りながら。
そんなわけで、料理人にもかかわらず客の前で仕事をしコミュニケーションをとるという鮨職人の持つ人間力というのは、一般の人間にとっても実に学ぶことが多い。人前ですべてを見られている中、自分の仕事をし、客の様子をきちんと観察し、さらには店のスタッフに指示を出す。そんな特殊な環境の中で磨かれる人間力、そして人間として大切なことを、作者である中澤さんが語ってくれている。
鮨自体の話というよりも、今失われつつある「人間力」のことに重点が置かれており、決してグルメ本などではない。鮨を通じて、人生の大切なことを教えてくれる貴重な本。ぜひ、ご一読を。