本書「魚附林の地球環境学」は、水産資源の宝庫である親潮・オホーツク海域におけるその豊饒な理由を「鉄」という物質をキーワードとして、複雑なメカニズムを解明するという、7年半にも及ぶ調査・研究の記録である。
それは、旧来からある「魚附林」という考え方を、アムール川流域のロシアや中国・モンゴルなど、国境を越えた広大な地域に適用し、著者のいう"Giant" fish-Breeding Forest、つまり「巨大魚附林」という概念で定義付けしているものである。
しかし、本書が単に調査・研究の報告書だけなら、一般の読者にとってはきっとつまらない書物で終わっていたことだろう。だが本書においては、その研究成果が「アムール・オホーツクコンソーシアム」の設立という形で開花し、オホーツク海とその周辺地域の環境保全に向けた国際的な取組へと発展させていく過程が紹介されており、今後の展開への読者の期待が膨らむことだろう。つまり、ある意味において、本書の第1章から第11章までは、それ以降のための長いながい序章だったといったら言い過ぎだろうか!?
さらには、人気小説の続編の発刊を待ちわびるファンのように、我々は本書の続編、つまりコンソーシアムの活動が成果を上げて、再びその報告書を手にする日が来ることを期待してやまない。ひょっとしたら、それは書物とは違う形、例えば私たちの食卓を北の海の幸が賑わすという現象で実感することになるのかもしれないが・・・。それは、そう遠くはない未来であってほしいものである。
くしくも原発事故に伴う放射能漏れ問題に世界中が注目している今、こんなときこそ地球環境学の先駆者である著者に、思う存分にリーダーシップを発揮して活躍してほしいと願わずにはいられない。