タイトル作「魚籃観音記」や「市街戦」など,筒井らしい作品も収録されているが(にしても,野坂昭如の解説は何なんだろう? 本当に呆けてしまったのか?),巻末の「ジャズ犬」「谷間の豪族」がよかった。
広場に犬が集まってジャズを演奏し,それを猫が聴いて楽しむ,という「ジャズ犬」。人間には騒音としか聞こえないため,野良犬・猫狩りが行われることになってしまった・・・抑制の利いた切なさを感じさせる作品だった。
3000段近くある石段を下った谷間にある妻の実家に住むことになった,という「谷間の豪族」も,何となくファンタジー仕立てのようないい味の作品だった。確かに,そんなところに住んでいたら,たまに東京に出てきたときには買い物などしまくることにもなろう。そこに,東京で一夜を過ごしたことがある女性が来て・・・こちらも,何かほっとさせられるような不思議な味わいの作品だった。