相米監督と言えば、厳しいが若手俳優を育て上げることでは右に出る者がいなかった。本作は相米組のフィルモグラフィーでも「異色」であり、安定感のある俳優が下北半島&増毛を舞台に、まぐろ一本釣り漁に命を賭ける名作である。いま観返してみると、思いのほか「天国へ旅立った」関係者が多いことに気付く。相米監督を筆頭に、緒形拳も夏目雅子も三遊亭円楽もレオナルド熊も下川辰平も今はいない。1950年代の作品ならばいざ知らず、本作は1983年の製作だ。あまりに早世が多いなあ・・・。まあ佐藤浩市も撮影の長沼六男もバリバリ働いているので、天国から応援されているのかも知れないね。北海道・増毛駅前にある富田屋旅館はあまりに風情があるため、わざわざ見に行ってしまったぞ(笑)。ちなみにその際映り込む角の木造建築は、高倉健の「駅」で風待食堂として使用されたところだ。増毛は昭和にタイムトリップしたかのような感覚があちこちに残っており、札幌からだと少し距離があるが、映画好きな方には訪問をお勧めします。本作で凄いのは緒形拳と佐藤浩市が漁船に乗る場面だ。今なら東宝スタジオあたりでVFXで撮ってしまいそうだが、本当に揺れる船での撮影は大変だったろうと思う。佐藤浩市がケガをする場面などは本当に心地悪かった。この二人は続いてP・シュレイダーの大問題作「MISHIMA」でも共演(スクリーン上での共演はなかったが)を果たしている。それと夏目雅子。本当に可憐だったなあ。ああいう「気品があって庶民的」な女優は多分、もう出てこないのでは。特典映像では現在の下北半島ロケ地を巡っている。星は4つです。