前作「キエサルヒマの終端」は、面白いが、旧シリーズの後日談でしかなかった。過去の遺物ではない、新シリーズを立ち上げる意義が確かにあると、確信させる本作だ。ネタバレにならないよう、詳細は避けるが、旧シリーズ一、二部、無謀編で、たまに出てきた未回収の伏線の数々が、次々に結実する様は痛快。特に、主に無謀編で、ギャグとして出てただけと思っていた、「ヴァンパイア」の設定が、ここでこんな重要な意味を持つとは。この新シリーズが、予定外の付け足しではなく、本来あるべきものとして構想(全部が全部ではなかろうが)されていたことがよく分かる。そして、その文体や世界観も、本当に独特。「キエサルヒマの終端」のレビューでも書いたが、これはもはやラノベではない。魔術や戦闘の描写部分を除けば、青春文学、例えば、「赤毛のアン」とか、「若草物語」とか、「次郎物語」なんかを想起させる。いわば、理不尽な大人とかやるせない社会のルールとかに、ときに抗い、ときに学んで、成長していく、少年少女の物語。ただ、前作では、登場人物達があまりに大人になりすぎて、バカをあまりやらなくなって、その分出てきた枯れた味わいが、好くも悪くもあったが、本作からは、世代交代で、若い新登場人物が増えたことで、旧シリーズ、特に無謀編にあったような軽妙なコメデイタッチのやり取りが復活して、若々しさが蘇ったことが嬉しい。まあ、一点残念なのは、旧ヒロインたるクリーオウが、登場はするのだが、まったく喋らない。漏れ伝わる雰囲気は、あまりにも良き平凡な母親になっていて、まだ悪ガキっぽさが完全には抜けきらないオーフェンに比べて、女の子って早く大人になるもんだなと。しかし、大人の落ち着きと余裕の中に、茶目っ気と激情も併せ持ち、若者に対するものわかりの良さもある、今のオーフェンって、かっこいい年の取り方をしたよ。うらやましい。