グルベローヴァの夜の女王が圧巻。ポップのパミーナ、アライサのタミーノ、モルのザラストロ、ブレンデルのパパゲーノ、オルトのモノスタトス、ローテリングの弁者なども各歌手の絶頂期であり、名演として有名で、映像を1枚選ぶならこれ。
ローゼの奥行きの深い舞台装置、エヴァーディングの合理的な演出は見ものである。夜の女王は冒頭、月の中に影の形で存在し、侍女たちに指示をしている。いざ女王が登場する場面では、始めに少しよろけて第二の侍女に支えられる。これは女王のアリアの前半部のパミーナを失った落胆の内容につながる演出である。グルベローヴァはこの前半部を非常に重視して歌っている。
エヴァーディングの演出では、第二幕の冒頭に第19曲のタミーノ、パミーナ、ザラストロの三重唱を移動させている。この三重唱は置かれた位置が奇妙なことから省略されることも多かった。ザラストロが試練に向かわせる前に二人を呼び出すのはきわめて自然であり、合理的な位置替えであった。ちなみにレヴァイン指揮の魔笛も同様である。
モノスタトスのアリアの中に「お月様。隠れていて下さい」というくだりがある。すると、空の月が暗くなる。その暗黒が、夜の女王を舞台に引き出すことになるという演出。
壮大な背景幕が次々に場面を転換させる(地下室、廃墟、庭園、山中、火の試練、滝の試練)。
パパゲーノとパパゲーナの二重唱では二人の後ろに子供たちが12人も登場して、パパゲーノも一時卒倒する。この子供たちを荷車に押し込み、それでも入りきらない子供たちを背負って、さらに抱え上げて運ぶのが爆笑もの。