国産TRPG『ローズ・トゥ・ロード』のゲーム・デザイナーとして知られる、門倉直人氏によるゲームブック第1弾。
独特の世界観を持つファンタジー世界ユルセルームに召喚された主人公が、魔力を駆使して奪われた自分の体を取り戻すまでを描く物語です。
秀逸なのが魔法のシステムで、単純に体力ポイントやマジックポイントを消費すれば望むとおりの効力が現れるわけではなく、主人公の目に視える複数のマジックイメージ(図形や色)の組み合わせを分析し、適切な選択を行わなければなりません。
そこがこのゲームブックの難しいところであり、面白いところでもあります。
また、パラグラフの随所に記されているミスティックマークは、単にゲームの進み具合をチェックするためのものではなく、自分のとった行動により主人公がいかに魔力に支配されてしまっているか、どのような精神状態にあるかなどを示しています。
いわば精神分析のようなものであり、これによって主人公の人格が形成され、続く2巻『闇と炎の狩人』での物語の進行に影響を与えていくことになります。
つまり、主人公の行動しだいで結末は絶望的な方向に進んでしまうこともあるわけで、このミスティックマークによる「プレイヤーには見えにくい因果関係」が本作に深みを与えているといえそうです。
本作は、もちろんゲームとして良く出来ているのですが、ブックの部分、つまり小説としての展開にも優れています。
どこかダークで叙情的な雰囲気。好みは分かれると思いますが、好きな人にはたまらない魅力があることでしょう。
また、作品の雰囲気作りに佐藤道明氏の美しいイラストが一役買っています。
作中に配された謎解きに関して、いくぶん著者の独り善がり的な印象は拭えないのですが、それでもゲームブック史上における至高の傑作と断言できます。読むべし!