子供たち、猟師やパルチザン、泥棒といった人物達の目から見た「世界」を描いた短編集。海で遊ぶ少年達を描いた「蟹だらけの船」のキラキラした光、戦争中に夜道を歩く青年の心象風景(「小道の恐怖」)、盗みに入ったケーキ屋で摘み食いに夢中になってしまった泥棒達の飢え(「菓子泥棒」)などを通し、様々な「世界」が万華鏡のように描かれる。
幻想文学かと思って読んだら全く違ったというレビューがあったが、僕らの生きる「世界」が万華鏡のように多彩なのだということを眩暈と一緒に思い出させてくれるこの短編集が、どうして「魔法」という単語をタイトルにつけてはいけないのか僕には分からない。(僕らが生きていること自体が「魔法」なのだよ。)そして、この作者の凄いところは、この目くるめく各作品の「世界」に第二次大戦の影が共通して感じられるところだろう。幻想的世界と戦争という現実を結晶させたマジック・リアリスムの一冊。