ヨーロッパ中世の魔女狩りの起源を、紀元前からの歴史を丁寧に調べてまとめた社会史である。
著名な歴史学者(たとえばミシュレ)の多くが魔女狩りは完全なでっちあげではなく、なんらか農民、商人、騎士、修道士達が当時の権威者(国王、教皇)に抵抗する活動の中に魔女裁判で自白された通りではないにしても、似たような秘密の集会があったと主張している。著者は紀元前からの文書、初期キリスト教徒の受けた弾圧とその理由、キリスト教の異端審問等を丁寧に豊富な歴史資料で分析し魔女の集会が完全なでっちあげであったことを論証している。これを読むと、薬で病気を治す人たちが、その不思議な力を魔法と思われ魔女とされたという説が、単なる伝承に基づいた俗説にすぎないことが分かる。
キリスト教の登場前にすでに秘密の集会の記述があり、初期のキリスト教徒が近親相姦、赤子殺し、動物(ロバ)崇拝、不道徳な好意を特徴とした夜中の秘密集会といった中世の魔女狩りでおなじみのことで弾圧された。12世紀には清貧をかかげ教皇を非難したワルド派が異端とされ、異端審問会ではやはり前記のような集会を拷問により自白させられた。また、14世紀初めにはフランスのフィリップ美王がテンプル騎士団に異端の罪を着せ、その領地、財産、権力を奪いとったが、この場合も前記のような秘密の集会が自白させられた。
歴史は厳密に解釈すべきで、もっともらしい筋書きにあっているものを良しとすべきでないとの教訓を得た。
「魔女の判別法に魔女の疑いを掛けられた者を縛りあげ川に放り込む方法がある。溺れて死ねば疑いが晴れ、浮き上がり死なないならば魔女とされ火あぶりになる」というのを何かの本で読んだ。理不尽性の典型として忘れられない。