キラキラしたカバーが綺麗でインパクトがある日本ではフレーベル館でしか読めないアメリカの人気女流児童書作家ルース・チュウさんの「魔女の本棚シリーズ」の1冊目です。このシリーズは2005年2月に本書が出てから2011年10月までに合計15冊も出版されているのですから、中々に息が長く日本の子どもたちからも高い人気を得ているのだなと思います。
シャーロットとウォルトの姉弟がにぎやかな通りにある「おたのしみチキン」で「ガラガラポン」の機械に挑戦して出て来た卵の中からふしぎな指輪を手に入れる。奇妙にも細い指にも太い指にもスルリとはまる指輪をしてから、二人の後をつけて来る黒い人影やなぜか人間に体を撫でさせない灰色のネコが現われるといった不吉な出来事が続けて起きる。
この物語でふしぎな指輪が起こす魔法は、料理や台所の後片付けを勝手にしてくれたり、自分の姿を周囲から見えなくしたり、自転車を宙に浮かせて空を飛んで駆けさせたりといったある意味とても子どもらしく夢のある無邪気な可愛らしい物ばかりで、大人の物欲に毒されてお金を出したりしないのがよい事だと思います。そして詳しくは書けませんが、作者は意外な仕掛けで読者をあっ!と驚かせ、姉弟を大人に相談させずに自分達だけで善悪を判断し最善だと信じた道を選んで行動させます。本書の最大の見せ場は、魔女の洞窟の中でシャーロットとウォルトの姉弟が魔法の指輪の力を使って、巨大アリをも家来に従えた悪い魔女たちと対決する痛快な大迫力のクライマックス・シーンでしょう。そして子どもたちにとってのささやかだけれど心からの幸せは、この物語で重要な役割を務める灰色ネコのアラベルが我が家に帰って来る事です。その夢が叶った朗報に全く事情を知らない両親共々家族みんなが最高の喜びに包まれますので、「ネコが満足そうにゴロゴロとのどを鳴らす姿」は本書を締め括るのに真に相応しい素敵なラスト・シーンだと言えましょう。