第二次世界大戦のヨーロッパ東部戦線が舞台になっている映画。
監督の実体験がベースになっているというのが面白い。
独ソ戦が始まる前。
ドイツとソ連は不可侵条約を結んでおり、互いに軍事視察など行っていた。
戦車を主力とする電撃戦を得意としたドイツはソ連には大した戦車などないと思っていた。
しかし、ソ連はドイツに内緒で作っていた。
ドイツの当時の戦車、2号や3号が全く歯が立たないT34型やKV1型を…。
戦闘を始めて初めてT34を目にしたドイツ軍の驚きは相当なものだっただろう。
ドイツはT34を捕獲して、それを超える研究に必死になる。
それが後の名戦車 パンツァーの傾斜装甲へと生かされてくる。
戦後の映画の場合、戦勝国側の兵器は多数残っているが、敗戦国側の兵器は使い物にならないものが多い。
例えばドイツ軍戦車はコレクションとして数台稼働する車両は存在しても映画などで使われることは希である。
かの「プライベートライアン」で登場するドイツ軍のタイガー戦車も実車ではなく作り物。ベースはT34である。
大戦後期に作られたT34の強化版であるT34/85型は「戦争のはらわた」などでも実車が使用されていたが、
本作に登場するのは42年頃の T34の初期型 T34/76型。
バルバロッサ作戦(独ソ戦の最初の戦闘)でドイツ兵が目にしたまさにその戦車。
初期型の車両だけに映画に使われることは少なく、それが本作では画面狭しと爆走するのだから感無量だ。
ペレストロイカ前、ソ連時代の映画は娯楽性があって叙情的な作品が多い。
「スターリン万歳!ソ連は偉い!」なんて新興宗教的なプロパガンダ映画も数多くあるが、
本作は「詩」的である。
ドイツ軍に捕獲されて実験に使われているT34(当時での世界最強戦車)とその戦車兵たちが、脱走するストーリーだが、花畑を爆走してその周りを捕らわれロシア女性が味方が来たと思って追いかけ回すシーン。
彼女たちを助けることは出来ず…戦車内で苦しい顔の戦車兵。幻のように走り去る戦車を希望の顔で見つめる少女。
ああ素晴らしい。
ハリウッドのアクション映画ではこのシーンのような繊細な場面は登場することはない…。
本作を最初に観たのは小学校の頃だったが、それから何度も繰り返し観ると感じ方が変わってくる。
彼らが逃げたのはドイツ軍からではなく、戦争そのものからではなかったのか?
実車が登場するのでリアルな映画でありながら、物語はおとぎ話的な悲しい話であった。
本作のような地味な作品が、市場から消え去ることなく何度もメディア化され続けることからも本作の「ファン」が多い証拠ではないだろう??