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日本人は、さまざまなものを「鬼」というひとくくりの名で呼んできた。その内実がこの本で明らかにされる。著者のように、芸術的衝動と共に「鬼」に惹かれるのは、「鬼」の一面を見ているからにすぎない。ほかの残虐な「鬼」もあり、その、著者の理解からは離れるのかもしれない「鬼」のことも、この本はちゃんと含み、記述している。
鬼たちの声なき声が著者の心の底で受け止められ、考察され、嫋々たる管弦の響きを思わせる文章が素晴らしい。鬼に変身した後の「鉄輪(かなわ)の女」の気持ちに思いを馳せる件りなど、胸を発止と打つものがありました。
映像として殊に印象的だったのは、朝倉山の上から、大笠を着けた鬼が下界の葬列の光景をじっと凝視している姿でした。
<< 遺骸を運ぶ喪の列を、深々とした大笠の下からじっと見ていた鬼がいたというのは、まことに深い、静かなおそろしさを感じさせる。>>
と著者が書いている、その「深くて静かなおそろしさ」にぞくりとしました。
「鬼」たちの発生と変転、そして衰亡を見つめる著者の深い情がこめられた眼差し、きりりと引き締まった文章の凛とした味わい。
とても読みごたえがあり、心に残る一冊。
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