高齢者心理学を学ぼうとする私にとって、本著は高齢者心理学を心理学における重要な分野として理解するための良著であった。
本著において高齢者心理学は、老年学の一部としてではなく、独立した心理学分野として位置づけられている。
したがって、心理学分野としての高齢者心理学の歴史や、昨今注目を集めているテーマを本著は網羅しようとしている。
例えば、注意、記憶、知能、知恵、情動、性格などの各テーマにおける研究動向を概観することができる。
重要なことは、本著に取り上げられているテーマが、高齢者心理学と銘打った他著に頻繁に見られるように、介護場面における認知症高齢者の心の理解や心理療法に偏ってはいないということである。
認知症などの高齢期におけるネガティブな側面のみならず、高齢期で観察されるポジティブな側面にも焦点を当てていることは、高齢者心理学の役割を読者に示すことになるだろう。
近年の研究動向を概観できるという点で、本著は高齢者心理学を学ぼうとする学部生・大学院生のテキストとして使用することを薦める。
巻末の研究ガイドには、主要な古典、各テーマに関するハンドブック、関連する学会および雑誌、文献データベースなどが記されていることから、より専門的な内容への自主的な学習を促すものである。
最後に、高齢者心理学が今後より注目される分野になることを述べておきたい。
国内には高齢者心理学が独立した学会としてまだ設立されてはいない。
また、高齢者心理学を体系的に学ぶことができる大学・大学院は少ない。
本著を手に取ることで、高齢者心理学を学ぼうとする学生の基礎になれば幸いだと感じている。