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高見順 闘病日記〈上〉 (同時代ライブラリー)
  

高見順 闘病日記〈上〉 (同時代ライブラリー) [新書]

高見 順 , 中村 真一郎
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

昭和38年10月、高見順はガンを宣告された。執筆活動と近代文学館開設のために奔走する日々、否応なく死と向きあう日々、病床での日常を克明に記録した日記は、「最後の文士」といわれた高見順の文学と思索の総決算でもあった。上巻は「昭和39年よ、さようなら。今年1年、こうして生きることができた!」と結ばれる。

登録情報

  • 新書: 378ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1990/11/15)
  • ISBN-10: 4002600483
  • ISBN-13: 978-4002600482
  • 発売日: 1990/11/15
  • 商品の寸法: 16 x 11.2 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 486,824位 (本のベストセラーを見る)
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By 横塚
形式:新書
 ぼくが最も好きな日本の作家は高見順(1907~1965)である。
友人の本棚から高見順の「闘病日記 下」を見つけて読み始めた。上を彼の家でもう一度探してもらおう。高見順はぼくの父より一つ年下であるから親父のようなものである。まさか58で死んだとは思わなかった。死因はガンである。ガンで倒れてからもペンを取れなくなるまで日記を書き続け、その後は彼の口述と口述も出来なくなった彼の様子を婦人が最後まで筆記している。伊藤整から「最後の文士」と呼ばれる。「敗戦日記」を読んだこともあるが日記文学の最高峰だろう。

「闘病日記 下」から少し抜粋しよう。
昭和四十年一月三日
 昨日の朝、自分は「表現者ではないというようなことを書いた気がするが、それは間違い、というよりも極端な書き方だった。「これはイケマス」と、なんでも小説に書く当世風の小説書き、これを私は表現者と名づけたのだ。自己から発したものでなければ書けぬ、書かない・・・あるいは、外部の客観的要求と自己の内部的要求に全き一致からのみ書く、こう言う作家を私は頭においていたので、それにしても、作家はアーチストであるとともに,アルチザンでなければならぬという考えは、前からいつも書いていた。このアルチザンとは小説技巧を「頭」でなく「腕」で理解している者、「腕」で書き「頭」で書くのではない、いい意味の「職人」の意である。アルチザンであるようにと私は心がけてきた。

 全くそうなのだ。絵の場合も同じであると思った。描かねばならないものは必ず描き、描かなくともよいものを描くくらいなら酒でも喰らっていた方がましである。そして描き始めたら肉体で描くのだとぼくも昔から考えてきた。それでぼくは自分を肉体派と呼べるようになりたかった。だがそのためには絵の修行がどこまでも必要である。あくまでもデッサン力がものをいうのだと思うのだった。それはまだまだ不足だ。だが日本の絵の世界にはアーチスト不在、アルチザンしかいないのである。
 
 高見順の死後アカハタでかかれた文章にこんなのがあった。
 「高見順は死ぬ前に日本共産党に入党して死にたかったと書いている」 
正確な引用ではないがこれは日共の我田引水である。
 
 同日の日記で
 「今日の日本共産党には私は共鳴も同感ももてない。日本の共産党だけではない。ソヴェートも、いやだ。共産革命は芸術家のためにあるのではない。そうは分っていても,あの「人間」を無視したような「政治」は私には、耐えがたい。」
と書いている。
 これで疑問が解けた。高見順ならこう書かねばならないように書いているのである。
 「死ぬ前に、入党して、共産主義者として死のうかな、などと考えているのでもない。」
こうまで言っている。
 
 ついでにもう少し引用しよう。これは重要な一節である。
 「同時代に生きて、この時代にもっともふさわしい、かかる苦しみ(注 共産主義に触れる苦しみ)を知らずにすごせた一生は、外見はたとえ平穏で仕合せでも、真にこの時代の苦しみを知らずに過ごした不幸から免れない。」
 「真にこの時代の苦しみを知らないことが不幸である」というのである。そんな「不幸な作家」がゴマンといる。

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