「吹けば飛ぶような出版社が、吹かれて飛んでしまった作家の本を出した!」
とこの本を形容したら、成甲書房の方に怒られるだろうか(森雅裕氏本人にお会いしたことは無論ないけれども、氏ならこれくらい何とも思わないのではと勝手に予測している)。
恥ずかしながら、それなりの数の本を読んできたもののこの出版社の名前は寡聞にして知らなかったので、この本の情報を最初に目にしたとき、とっさに上記の感想を抱いてしまったのである。甚だ無礼ではあるが、正直な感想としてご寛恕いただきたい。
職人気質の性格と編集者に恵まれなかったことが災いし、出版業界から爪弾きに遭った不遇の作家・森雅裕(私は歴は浅いけれども氏のファンであり、『推理小説常習犯』は古本屋を駆けずりまわって手に入れた程である)。その氏が「食いつめてコンビニでバイトをした体験記を書いた」と新聞広告にて知り、慌てて買いに走った次第。
早速開いてみるが、(商業出版物としては)10年ぶりの新作であるとはいえ、1ページ読めば、全く衰えることのない森節とわかり一安心。後は一気呵成に読了した。
芸術家等の一般にはとっつきづらい世界でも、鮮やかに描き出せる氏の筆力に、コンビニというこれ以上ないほど身近な舞台が加わったのであるから、これはもう鬼に金棒、その生々しさたるやただ事ではない。
「現代社会の縮図」という使い古された表現があるが、その表現がぴったりくる内容である。笑える部分もしんみりする部分もタメになる部分も、たっぷりと詰まった一作であると保証する。
一読書子のネットでの書評など、それこそ風の前の塵であろうが、ここでレビューを書くことで一冊でもこの本の売り上げが伸びればと思い、ここに乱文をしたためた。
願わくばこの本が好調に売れ、作家・森雅裕にさらなる作品を執筆せしめる余裕を与えんことを!