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高瀬川 (講談社文庫)
 
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高瀬川 (講談社文庫) [文庫]

平野 啓一郎
5つ星のうち 3.4  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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高瀬川
23歳の若さで芥川賞を受賞した作家が著作活動のバネにしてきたのは、実は教養不足への劣等感だという。今回はこれまでの作品と趣を大きく変え、平易な文章で男女の性愛をテーマにした。「作家としての挑戦」と語る意欲作だが、やや行きすぎ感もある。(聞き手は川嶋 諭)

もっと自分を鍛えたい

――1999年に史上最年少の23歳で芥川賞を受賞した『日蝕』をはじめ、『葬送』や『文明の憂鬱』などの著作は、かなり難解な文章でした。今回の『高瀬川』は、一転して非常に現代的な文体ですね。

漢語を多用してきた今までの私の作品については、読みにくいという批判を受けました。現代人なのに、何でわざわざ小難しい文体にするのかと。

今回は、そういう批判に対して応えたのではなくて、作家としての挑戦だと自分では思っています。テーマも現代の若い男と女の性的な関係に正面から取り組みました。欧州の中世や人間の死について哲学的な視点から取り組んできた作家が、こんな作品も書くんだ、書けるんだということを示したかったのです。

ただし、男女の性を扱うからと言って、読者の性的興奮を促すことが目的ではありません。性的な描写が多くて誤解されると困るのですが、私は人間のコミュニケーションの延長として性を描いたつもりです。私は、宗教家であり哲学者でもあるジョルジュ・バタイユが、日常を彫刻したというエロチシズムの世界に惹かれてきたのですが、一方で歴史的、宗教的背景の中で作られてきたこれまでの性に対する観念への反発もありました。

――平野さんの本を読むと、何か社会に対する反発が作品を書くエネルギーになっているような気もします。

そういう面はあると思います。例えば、私が漢語を多く含む文章を書いてきたのは、私が受けてきた教育に対する反発というか、コンプレックスがあるのは事実です。

学校でまともな教育を受けさせてもらえないまま大人になってしまったという気持ちが強いのです。古文や漢文、英語もその面白さ、そしてそれを身につけることの大切さを教わってきたのではなくて、試験を通るために必要なことだけを勉強させられた気がしてなりません。

明治時代の人たちは、いわゆる教養があって、その教養を基に深い思索をしてきたでしょう。現代の私たちと表現力に決定的な差がついているんじゃないかという危機感があるのです。深い教養と思索なしに表現することの浅薄さ、危険性。私が抱くコンプレックスは、明治時代の人たちに対して特に強く感じます。

もちろん、当時に比べればコンピューターなど新しいものがいっぱい出てきて、私たちがやらなければならないことが増えました。しかし、コンピューターで人間を表現することはできません。もっともっと自分を鍛え磨かなければならないという気持ちが、私の小説の原動力にもなっています。

――作風を大きく変えると、せっかくのファンが逃げてしまうという危機感は覚えませんでしたか。

作家として、私はまだ駆け出しで、いろいろ挑戦してみたいと思っています。男女の性を正面から取り上げたのも、小説の中で中途半端に扱うなら全く書かない方がいいという考えでした。作家には、時間をかけて1つの技を職人芸のように磨き上げていくタイプもあると思いますが、私は生来飽きっぽいせいか、そういう方法は向いていないようです。

私がいろいろ挑戦するので、読者もきっと、ついたり離れたりするでしょうが、そういう読者の人たちと人間とは何か、社会とは何かを一緒に考えていきたいと思っています。

( 川嶋 諭)
(日経ビジネス 2003/04/14 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

出版社 / 著者からの内容紹介

小説家と女性誌編集者が過ごす、京都の一夜を繊細な心理主義的方法で描き、現代の「性」を見つめる「高瀬川」。亡くした実母の面影を慕う少年と不倫を続ける女性の人生が並列して進行し、やがて一つに交錯する「氷塊」。記憶と現実の世界の間(あわい)をたゆたう「清水」など、斬新で、美しい技法を駆使した短編4作。

登録情報

  • 文庫: 256ページ
  • 出版社: 講談社 (2006/10/14)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062755394
  • ISBN-13: 978-4062755399
  • 発売日: 2006/10/14
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.8 x 1.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.4  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By hamachobi トップ500レビュアー VINE™ メンバー
形式:文庫
短編4本が収録された短編集。なんだかよく分からない実験的な小説もあるけど、一番面白かったのは表題作だ。

男女がラブホテルで一夜を過ごすというだけの話なんだけど、彼が描くと、単なるセックスの話ではなく、細部に至るディテールに引き込まれ、何かものすごく特別なことが描かれているような気がしてくる。不思議。

そこが彼の才能なんだろうけど...

ただ、あまり心に響かないのはどうしてだろう? v
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10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
著者の作品は初めて読んだ。

(1)情景の描写が微細、(2)漢字使いや言い回しが難しい、(3)手法で遊んでいる、というのが特徴と言えるでしょうか。

表題作の「高瀬川」は題材としては目新しいものはないが、その描写(官能的な部分を含む)に「ああ、あるよね」と思せるところがあり、個人的には楽しめた。

「氷解」では、並行で進んでいる物語を二段組で同時進行させている点において、新しい手法にチャレンジしている風であるが、その実はそれほど奇抜なものでもない。寧ろ、同時進行していると思わせる物語が実はシンクロしていない(主人公それぞれの思い込みによる)、というズレ方にこそ「遊び」がある。そういう意味ではやられたかな。
このレビューは参考になりましたか?
32 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By
形式:単行本
平野はどれ程文体をアカデミックなものにしても、年齢には勝てない。
せいぜい、屹立した象牙で獣になることしか考えていない、本質的に「中身」を持っていない作家である。日蝕や葬送はまだ頑張って書いていたので許すが、これは悪臭、否、青臭がする。多くの批評家や作家が彼を評価しない理由もそこにある。彼は西洋哲学、西洋文学にコンプレックスを持ちすぎている。劣等意識は才能の一つだが、知的言語の羅列で悦に入るのは、あまり文学を目指すものとして誉められたものではない。それは単なる武装であり、自慰であり、作者の得意なペダントリーである。平野が本来の平野に戻った瞬間、私は彼を高く評価するだろうが、今でははっきり言って、漫画界で窃盗行為をしていた矢吹以下である。
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