高次脳機能障害当事者や家族と接しており、前著はかなり話題となりました。
当事者でないものにとっては、当事者の見ている不自由さなどは外より推察するしか
ありませんが、筆者はそれを明瞭な表現で教えてくれて、当事者の世界を知る一助と
なりました。
しかし、筆者も述べているように「高次脳機能障害者は一人ひとり異なる」ものです。
当然ながら、知的な部分が保たれている筆者の経験を一般化できない部分もあります。
これは筆者の責任ではありませんが、前著を読んだとき、
「どうしてうちの当事者は山田さんのように意欲的になれないのか」といった意見が
介護者から出ることが危惧されました。
本書は、Q&A形式で筆者がさまざまな質問に答えてゆく形式になっていますが
前著よりやや慎重になっている印象を受けました。
筆者がピアカウンセリングを経て経験された困難さについて、かなり言及があり、
筆者自身が筆者の経験の過度の一般化を戒めている記述がしばしばみられます。
たとえば、話題となった、前頭葉の「前子ちゃん」。みずからを客観視するための
キーワードですが、「前子ちゃんが弱い人もおり、周囲からの援助も必要」と
フォローしてあります。
あとがきでは、心にしみるエールが述べられています。障害を持っている人は
試練に勝利しつつある人間としての誇りを持って生きてもよいのではないか、と。
筆者が医師であるからでしょうか、生命に対する謙虚さも感じられ、毎日生きていると
いう、ただそれだけの幸せをあらためて本書から実感しました。