著者の高橋さんの息子T君は高機能自閉症で、京大大学院の修士課程で学んでいる。本人が研究人生を望んでいる事もあるが、就職活動が難しい事も有り博士課程への進学を考えている。京大に入れる学力があっても、それで問題が解決するわけではないのだ。
高橋さんはT君を育てると同時に自らも大学で学び、今ではこの分野で研究者として活躍し、高機能自閉症児のためのNPOも設立している。
自閉症が人の気持を読みとる能力が欠落した障害であるのに対して、高橋さんのT君の観察はとても詳細である。本書には自閉症は様々で全員に適した対処法は無いと書かれてるが、強いて上げれば我が子を丁寧に観察し理解することに思える。
本書の2/3は小学校までの記述で占められている。それだけ子供時代の支援が重要だということだ。特に幼児期については考えさせられる。T君は障害を持つ児童の受け入れに積極的な私立の木島幼稚園に入り、高橋さんも驚く程の成長を見せた。その一方、他の多くの幼稚園では入園を断られた。木島幼稚園のような優れた取り組みは、私教育ならではの独自の裁量権で改良を続けてきた結果だと思うが、その一方、幼稚園が義務教育ではない事が、助けを必要とする多くの障害児の入園を阻んでいる。公教育と私教育の適切なバランスはどの辺にあるのだろう?
T君は算数に秀でており、高橋さんはそれを尊重して子育てをした。しかし、学力が障害を補うとは考えておらず、高橋さんは社会に適応する能力を最重要の課題として育てた。
また小学校以降は開拓者として環境を整えてきた面が多々あり、本書に記された知見を得たのは勿論、後に続く子供達にも良い環境を作り上げたと思う。
普通の子供でも、昔の子育てといえば社会への適応力を育てることが全てであったろう。自閉症児が特別困難を抱えてるのは事実であるが、高橋さんの経験は、子育てに悩む全ての母親の参考にもなるように思える。