古賀茂明氏の『官僚の責任』もそうだが、元官僚達の著作は中々面白い。本書も自民党と民主党の両政権を官僚として支えた著者ならではの語り口がひとつの魅力である。ただし、本書を経済書として読むとき、注意すべき点も少なくない。例えば「シニョリッジ」の説明である(pp.171-172)。シニョリッジについて著者は、「日銀が紙幣を刷ると、紙幣を作るのにかかる費用は、発行価額に対して0.2%(20円)である。したがって、1万円を刷るだけで、日銀には9980円の差益が入る。この差益がシニョリッジである」と説明している。大学の金融論または経済学の試験で、シニョリッジの意味を問われたとしよう。上記の説明をそのまま書いた答案に、99%の教官は合格点を与えない。高橋氏がシニョリッジをあえて上のように説明するのは、別の意図が隠されている可能性もある。それだけに、経済学の入門者はよくよく注意しながら本書を読まなくてはいけない。