昨年の西武裏金騒動に端を発した特待生騒動で改めて世間の耳目を集めた「高校野球とカネ」。大マスコミにとって賞味期限の切れたこの問題について鋭く迫った本書の内容は永久保存版の価値がある。
冒頭、明徳義塾・馬渕史郎監督他の口から語られる(なぜ馬渕監督かは読んでのお楽しみ)ダルビッシュ有の東北高校への真に迫る進学裏話から読者は著者の高い取材力と分析力に驚愕させられ、グイグイと本書に引き込まれることになる。野球オヤジたちがネット裏談義で実しやかに語る噂話などが、見事に裏付けられていく筆致の冴えは痛快の一言に尽きると言ってもよかろう。
「裏」ビジネスの「入り口」として語られるボーイズリーグ論はよくぞここまでという丹念な取材の成果が満遍なく発揮されており、同時代としては当然であるが後世への資料的価値も極めて高い。ダルビッシュの項と私の表現は重複するが、噂話レベルの「暗部」を著者の持てる人脈をふるに発揮して実証していくその叙述は、ジャーナリズムとして最高峰のレベルに達している。
本書の最後で触れられる自民党・高校野球特待生制度問題小委員会と高野連との丁々発止の描写についてはさらにセンセーショナルな要素を含む。自民党側から「特待生廃止」に突き進む高野連に楯突いた議員連の中心にある「作新学院閥」。見方によっては特待生騒動が政府自民党をも巻き込んでいった要因として、自民党文教族による利権主張という側面があったとも裏読みすることができる。巻末に付された自民党小委員会から高野連に送られたメッセージは、その事実を雄弁に物語るものともいえまいか?