読書好きほど読むジャンル、好む文体が偏ってくるようである。自分が気づかなくとも、この学生のために編まれた『高校生のための』三部作に目を通していると思い知らされる。「こんなに多様なテーマ、文体があったのか」と自分が井戸の中の蛙ではなかったかと身震いがしてくるほどである。本書はもともと学生のためのものであるが、多忙で自分の好む、あるいは必要な本しか読めない社会人にとっても、短文読み切りで手軽に紐解くことができ、日本語が本来持っている豊かな表現力、多様な文体の可能性を体感させてくれる役立つアンソロジーである。『文章読本』ではモーパッサン、ファーブル、プルースト、モーツアルトなどの翻訳から、武満徹、大岡昇平、坂口安吾、村上春樹、朝永振一郎、淀川長治ら70塊??の書き手の文が収められている。途中に差し込まれた【手帖】と名づけられた編者のつぶやきや「作文の手順」「さまざまな技法」などの付録も有益である。