中学や高校生の頃、美術の教科書でお馴染みだった「老猿」の作者の本です。木彫でこんなリアルな彫刻よく作ったなー、と昔見ながら感心していました。たまたま、この本が目に留まったので読んでみましたが、、、これは面白いですね。
「江戸時代の仏師上がりで、衰退しかけていた木彫を写実主義を取り入れることで復活させ、江戸時代までの木彫技術の伝統を近代につなげる重要な役割を果たした。」(wiki)
と言う偉い人ですが、全体としてはおじいちゃんが、昔の出来事を語って聞かせるような記述で読みやすいです。しかも、このおじいちゃんは何故か遙か昔のことを鮮明に覚えています。
前半は江戸末期から明治初期の頃の風俗、自分の身の上、師弟制度の話、親、師匠、知人、友人など身の周り、浅草の大火の話・・・これが詳細で、当時どのようなことが起こったのか良くわかります。丁稚奉公が11年と決まっていたなんて知りませんでした。当時の風俗を知るエッセイとして読んでも十分面白いです。
後半部分は自分の仕事の話ですが、これが凄い。何気なく語られていますが、少年の頃に彫った鼠が生きていると勘違いされたり、師匠(高村東雲)の替わりに博覧会の彫刻を彫ったら、いきなり1位をとってしまったり、木彫ではなく蝋を捏ねる仕事を引き受けたら、懇意にされてそれから2年も拘留されたり、お金持ちの商人が万博用に依頼した矮鶏を作ったら間に合わなくて、彫刻会の人にそれを無理やり展覧会に出品させられたら、それが明治天皇の御眼に留まって攫われて(?)しまったり、いきなり皇居造営に借り出されて欄間や鏡縁を彫らされたり……色々凄い事ばかりなのに、何故かギャラのほうは手間賃+ちょっとで相変わらず貧乏だったりします。
光雲氏の作品は(特に若い頃の)ネットで探しても写真ですら中々お目にかかれないので、この人がひたすら彫りまくっていた頃、一体どんな作品を彫っていたのか?もう想像するしかないのですが、それも又楽しです。
普通のエッセイとしても本当に面白いので、廃刊されてしまわないように、美術に興味の無い方でも、是非買って読みましょう。