逆説的にだが、他人の成長を実感するということは、自分も成長しているということだと、
この作品を通じて理解することができる。
この巻は久留里が勇気を出す場面がいくつか見ることができる。
思ったことを素直に言う、こんな些細なことだが、
作品初期の彼女からは想像できない、大胆な行動である。
相変わらず心の声が多いものの、徐々に表情豊かになってきており、
見たことのない表情をみると時折こちらもドキッとする。
これまではヤサぐれず中学生活を終えたが、
次は取り巻く環境が変わり、世界がぐっと広がる高校で、
彼女がどのような人格を形成し周囲にどのような影響を与えるのか、
今後も彼女に目が離せない。
ここまでは高杉君が書いたようなレビューになってしまったが、
高杉君もまた成長している。
例えば32話では、「10年間進歩していない」という悲しい内省が出来た。
だがこれも、久留里との奇妙な生活の中で、彼女の著しい成長を目の当たりにするにつけ、
自然に自分と向き合える機会が増えたことによるものだろう。
地理学者として既に持っていた観察力、新しいことに飛び込むハートの強さ、
拙速ではあるが高い行動力が下地となり、本人も成長することで久留里の成長や行動の意図も
拾うことができている。お互いの良い面悪い面でしっかり噛み合っているコンビだと思う。
ただ成長期真っ盛りの中学生と加速度的におっさん化する独身男、当然成長差は歴然である。
二者の成長速度の差がきちんと描かれている点もこの作品の魅力の一つだ。
複雑な家庭事情の美少女を急遽引き取らざるを得なくなり、
初期の高杉君はさながら「不器用な爆弾処理員」のようで見ていてヒヤヒヤしたが、
手探りで対応を模索、その結果一つの答えとして導き出せた「弁当作り」、
このキーワードは5巻経った今なお、大事にされている。
あくまで弁当そのものが主体でなく、弁当作りをきっかけに話が動き出す点がポイントで、
地理学とテーママッチしている点もかなり上手い。もちろん弁当自体にも魅力がある。
弁当のおかずをつまむように読者も色んな視点で楽しむことができる。
そもそも成長とは何なのか、それすらも投げかけているようなこの漫画、今後も非常に興味深い。