筆者の水月昭道氏は龍谷大学中退後、バイク便ライダーとして働いた後、長崎総合科学大学を卒業し、九州大学大学院博士課程を修了して、人間環境学博士の学位を取得した方です。
以前なら博士号はなかなか取得できませんでしたし、特に文系では、大学内でも学会においても一定の評価を受けていました。学位の値打ちが下がったとはいえ、博士号を取得すれば、大学の専任教員への就職の道は比較的容易な頃もありましたが、著者の記述どおり、ここ10年以上、多くの博士が世に出ても、大学自体が厳しい競争環境に置かれている時代に突入しており、就職の道が狭き門になっているのは不運なことだと同情します。
学問への関心が個別分散化していき、筆者の取得している「人間環境学博士」のように学際的な学位も増えました。特異な学問への傾倒は学者として必要な要素ですが、こと就職にあたってはそれが足を引っ張ります。今も昔も博士後期課程への進学はリスクを伴うものですから、本書のタイトルも実態を表している面があります。
ただ通読して感じたことは、指摘されている点はよく理解できるのですが、残念なことにどうしても身近な限られた人の伝聞記録でしかなく、実際どの程度博士号を持った人が就職できていないのかという実態を示すデータが少ないため、事例報告に終わってしまっているのが残念です。
「高学歴ワーキングプア」という刺激的なタイトルにより本書は一定の購買数を残すと思いますが、それも筆者の専門である環境行動論の業績として点数に含まれるのでしょうか。もしそうであれば本書執筆の値打ちはあったと言えましょう。