映画「宮本武蔵」に佐々木小次郎役の似合う男っぽさ、高倉健の生い立ち、映画人生。その思い出の記とアルバム、そして出演映画一覧。それらの中で、とくに印象に残った一つのことを挙げ、この人の人間性発見を述べておきたい。
旅での出会いを四季に分けて語っている中で、「夏の旅」〈人間のリズムで暮らす〉の一文に心惹かれたのである。「昔男ありけり」というテレビ番組のドキュメンタリーで檀一雄といっしょになった、その出会いのことをかなり詳しく書いている。場所はポルトガルのサンタクルスである。檀さんは異国のこの小さな漁村で暮らしていた。ここで暮らす人々の生活のリズムが、旅人の高倉健にも心地よく伝わってきたという。生前の檀さんのことを皆覚えていて、愛おしむように思い出を語ってくれたという。その温もりみたいなものが、本当の「人間のリズム」ではないかと思う。「男が男らしく生きるとはこういうことなんだ」と「火宅の人」の口述テープを聴きながら思ったという。
「さまざまな欲望の中で、自分の行動を規制し、もって大事をなす」という意味の言葉を想起したりするのだった。
肺癌の末期による激痛に襲われながら畢生の労作「火宅の人」を書き残す男の最期を演じさせてもらったことを言っているのである。命を鍛冶して自分の人生に立ち向かう壮絶さに感じて演じ上げたということ。最期に最も印象的なすばらしい「檀一雄観」が次の一文に表されている。
「人生とは何か、を伝えたい父親の優しさが、無頼と呼ばれた強い男の裏にある」すなわち、男は多くを語らないのである。