茶道を最高とする正統派古美術商とはこのように生まれ育ち、道を極めていくものなのか、と語りかけてくるような文章で数々のエピソードや告白がなされ、ページを繰る手が止まらない。
東京空襲で、真っ黒に焼けただれた尾形乾山の手鉢に盛られた瑞々しいキュウリ――それを養家で見た子ども時代から骨董修行は始まった、というくだりには心打たれた。
古伊万里大流行の背景や、ニセモノ論議(中島氏は「ニセモノはあっていい」と言い、それを「多少不透明な、とろみのようなもの」と呼んで、社会を活性化させるものだとする)も面白い。そして、冒頭の「本当のお宝とは一人一人の心の中にあるものだ。」との言葉が、彼が「本物」の人間であることを示している。
テレビでのイメージとは全く違う、真摯で侠気にあふれ、かつ限りなくしたたかに自分の美意識一本で生きていく時代の才人の姿を垣間見ることができる、満足の一冊。