冷戦時代ならではの風刺に満ちた『博士の異常な愛情』や『未知への飛行』などに代表される啓発精神旺盛なフィルムの数々。この『駆逐艦ベッドフォード作戦』も間違いなくそんな作品の一つ。そのかぎりにおいて、これはリアルで不気味な船上劇の良作といっても差し支えないでしょう。
後年、ジーン・ハックマンとデンゼル・ワシントンとが競演した『クリムゾン・タイド』にも似た展開。もっとも、本編ではソ連籍潜水艦の撃沈にあくまでもこだわるクレイジーな艦長に異議を唱えるのは、たまたま駆逐艦に乗船したいた民間人ジャーナリストというところがユニークであり、一見風変わりなストーリー展開を楽しめます。
駆逐艦ベッドフォードを牛耳る偏執的職業軍人のフィンランダー艦長にリチャード・ウィドマーク。余裕綽々ながらどこか屈折した人間性を垣間見せるあたり、この人らしい役柄を得て水を得た魚のようです。いっぽうで、取材を通して艦長の異常さに気づいていく良識あるジャーナリストのマンスフォードにシドニー・ポワチエが扮し、インテリジェンスを備えた好青年をいつもながらに好演しています。過去『復讐鬼』や『長い船団』で競演し気心の知れた二人。両者とも日頃から積み重ねてきた役柄の集大成を危なげなく演じているといった印象です。
フィンランダーとマンスフォードの会話のうちに、少し間違えば軍人が陥ってしまいがちで危険な功名心への焦りが浮き彫りにされていくあたり、不気味なものを感じさせます。ジェームズ・B・ハリス監督は本編をお決まりの戦争アクションに陥らせること無く、あくまでも心理描写を中心に淡々と、時に急場的アクセントを入れ込んで巧みに展開させていて秀逸です。
観終わったあとの放心状態がいつまでも忘れられないメッセージ・ウォー・ムービーの効果的な作例といって差し支えないでしょう。