唐末の安禄山の反乱を機に群雄が割拠する大動乱期に入る中国。馮道は平凡な家系から身を起こすがその博識をもって興っては消えるめまぐるしい戦国の国々に多数仕えることになる。多数の君主に転じて仕えたがゆえに忠なき悪臣と評価される面と戦乱にさらされた当時の民をはじめ飼っている魚すら命を奪うということを忌み馮道のおかげで多くの命が救われたと高く評価される面とがあるということだ。
時は唐朝崩壊後の乱世。当時は貴族、門閥が幅を利かせ無能であっても家柄が良ければ高官になることができた。逆に有能でも家柄が無力であれば官職にありつくのは難しい世の中であった。しかし馮道はその博覧強記により官界でのデビューを果たす。当時は門閥社会であると同時に力をつけた軍閥が台頭してきており著者は日本の戦国時代の基となった応仁の乱と比して貴族の栄華から軍閥へ力が移行していった過渡期という解釈をしている。
本書のほぼ半分は唐末からの動乱にあてられておりめまぐるしく国が興っては消え中国史に詳しくないと多数の人名がでてきて混乱しやすく読み進むのも苦労するかもしれない。
ただ後半半分は馮道中心に書かれており人間臭いエピソードや戦争、権力闘争などわかりやすい話になっている。例えば見た目や風采は上がらないのにその英才により人から意外感をもって尊敬される様や民はもとより飼っている魚まで命を大切にしてやる様子、非難されたり殺されそうになっても平然として動じない様など信念をもって泰然としてる様は大人物という印象を受ける。
多数の君主に仕え忠誠心を問題にされる馮道だが当時は早ければ数年で消えてしまう国もあり忠誠を貫くといっても難しい時代であったと著者は同情している。むしろ戦乱で死ぬ者が少しでも少なくなるよう君主にも進言するさまは他への愛があふれているように感じて私は馮道に大変親しみと尊敬を感じた。中国史の偉人として素晴らしい人だと思う。