登録情報
|
・奥州の覇者正宗が歴史に残した足跡を、彼の持つ非凡な詩歌の才と共に描いた「馬上少年過ぐ」
・一介の町医者の身から伊予宇和島の命運を握るまでに栄達し、数奇な人生を送った山田重庵を描いた「重庵の転々」
・大阪の陣の後に武士になることを嘱望した大須賀満左衛門の奮闘を描く「城の怪」
・賤ヶ岳七本槍の武将として武名を轟かせた脇坂甚内(安治)の生涯を描いた「貂の皮」
これら7作からなる短編集です。
舞台となる時代も執筆した時期も違っているのでこれら7作には特に関連性はないと思いますが、個人的には「時代の流れの中で、個人が置かれた状況下で必死に生きた人物たち」という共通点があるようにも感じました。
収録作品数もページ数も少なめなので短時間で手軽に読み終われますが、司馬作品なので内容については太鼓判を押せます。
派手さはありませんが、歴史の中を一生懸命生きた人々の息遣いが感じられる、そんな一冊だと思います。
●伊達政宗の幼少期、乳母に恵まれたり、教育係の武士に励まされて頑張ったからだ、というのは勇気を与えてくれるような気がします。
悲しい選択をしなければならない、戦国時代の武将の哀れさが最初の詩と現実と。
本当にこの当時の人たちはどう自分の気持ちに折り合いをつけたんだろうか。
主人公たちの中で、誰でも知っている有名人は伊達政宗のみ。他はほとんど名を知られていないいわば「歴史の脇役」たちである。(伊達政宗も脇役といえば脇役かもしれないが)
司馬の作品は幕末と戦国期に集中しているが、それは、大きな変革の時代にこそ男の典型を見ることができるからだという。激動の時代にしか開花させることができない才能、たとえば信長であり、秀吉であり、あるいは、西郷であり、竜馬であり、といった英雄的才能を大作で取り上げる一方で、見逃すには惜しい脇役たちも、こういった小編で光をあてていく。これが司馬のおもしろいところだと思う。
作品はどれもよく甲乙つけがたいが、とくに「重庵の転々」という物語のおわりにつけられたエッセイ風の文章が、独特の不思議をかもし出していて、気に入っている。また「城の怪」は歴史小説ではなく、司馬が5年おきくらいに書きたくなる、という幻想小説である。「城の怪」執筆の昭和44年頃は他に「妖怪」や「大盗禅師」などがあるが、切れ味の鋭い歴史小説とは違って、幻想小説の不思議な味わいもよい。
なお、前半3本は昭和38年(40歳)頃、後半4本は昭和44年(45歳)頃書かれたもので、執筆年代が5年ほど開いている。そのあたりを含みながら味わうのもまたおつなものである。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|