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舞台は18世紀のフランス。町は汚穢(おわい)にまみれ、至るところに悪臭が立ちこめていた。そこに、まったく体臭のない男がいた。男にないのは体臭だけでない。恐ろしく鋭い嗅覚と、においへの異様なまでの執着以外に、男には何もなかった。
物語は至高の香りを求めて、めくるめくにおいの饗宴が繰り広げられる。ドアノブのにおい、石のにおい、花の香り、動物のにおい、果ては目立たない人のにおいに至るまで、ありとあらゆるにおいが立ちこめる。登場人物も、究極のにおいの美少女以外は、主人公も含めて恐ろしくグロテスクである。まさしく魑魅魍魎(ちみもうりょう)。裏道、闇、疫病、屠殺、汚濁…にもかかわらず、なぜ本書からは恐ろしく魅惑的な香りが立ちのぼってくるのだろうか。
パリには複雑で洗練された味わいがベースにあるように、生ハムやチーズのすえたようなにおいが鼻を突いても、この町で、人を引きつけてやまない魅力がグロテスクなのかもしれない。ストーリーも舞台も登場人物も、実に巧妙に展開している。一度手にとるとテンポよく、一気に読んでしまう。読者は主人公とともに限りなく奥深い嗅覚の世界をさまよい、陶酔させられることだろう。
著者は1949年ドイツ生まれ。本書は87年世界幻想文学大賞受賞作品。ほかに『コントラバス』、『鳩』、『ゾマーさんのこと』などが翻訳出版されている。(小野ヒデコ) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
出版社/著者からの内容紹介
奇想天外! 「鼻男」の一代記
十八世紀のフランス。あらゆる人を陶然とさせる香水を創り出す匂いの魔術師が、馥郁たる芳香を放つ少女を求めて次々に殺人を犯す
十八世紀のフランス。あらゆる人を陶然とさせる香水を創り出す匂いの魔術師が、馥郁たる芳香を放つ少女を求めて次々に殺人を犯す
内容(「BOOK」データベースより)
18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに…欲望のほむらが燃えあがる。稀代の“匂いの魔術師”をめぐる大奇譚。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ジュースキント,パトリック
1949年、ドイツのアムバッハ生まれ。新聞や雑誌の編集者をしながら書き上げた戯曲「コントラバス」で一躍注目される。85年に発表した『香水―ある人殺しの物語』は80年代ドイツ文学界最大のベストセラーとなり、23カ国語に翻訳された
池内 紀
1940年、姫路市生まれ。東京外国語大学独語学科を卒業し、東京大学大学院修士課程修了。文芸評論家、翻訳家。世紀末ウィーンの研究で知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1949年、ドイツのアムバッハ生まれ。新聞や雑誌の編集者をしながら書き上げた戯曲「コントラバス」で一躍注目される。85年に発表した『香水―ある人殺しの物語』は80年代ドイツ文学界最大のベストセラーとなり、23カ国語に翻訳された
池内 紀
1940年、姫路市生まれ。東京外国語大学独語学科を卒業し、東京大学大学院修士課程修了。文芸評論家、翻訳家。世紀末ウィーンの研究で知られる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)