物語は至高の香りを求めて、めくるめくにおいの饗宴が繰り広げられる。ドアノブのにおい、石のにおい、花の香り、動物のにおい、果ては目立たない人のにおいに至るまで、ありとあらゆるにおいが立ちこめる。登場人物も、究極のにおいの美少女以外は、主人公も含めて恐ろしくグロテスクである。まさしく魑魅魍魎(ちみもうりょう)。裏道、闇、疫病、屠殺、汚濁…にもかかわらず、なぜ本書からは恐ろしく魅惑的な香りが立ちのぼってくるのだろうか。
パリには複雑で洗練された味わいがベースにあるように、生ハムやチーズのすえたようなにおいが鼻を突いても、この町で、人を引きつけてやまない魅力がグロテスクなのかもしれない。ストーリーも舞台も登場人物も、実に巧妙に展開している。一度手にとるとテンポよく、一気に読んでしまう。読者は主人公とともに限りなく奥深い嗅覚の世界をさまよい、陶酔させられることだろう。
著者は1949年ドイツ生まれ。本書は87年世界幻想文学大賞受賞作品。ほかに『コントラバス』、『鳩』、『ゾマーさんのこと』などが翻訳出版されている。(小野ヒデコ) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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17 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
天才と狂人,
By コウ - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 香水―ある人殺しの物語 (文春文庫) (文庫)
匂い、香りだけが世界の全てだったら・・・。読み始めてすぐに、ジャン=バティスト・グルヌイユのおかしな世界に夢中になるはずです。 悪臭の中生れ落ちたグルヌイユは、並々ならぬ生命力と忍耐で成長していきます。世界で唯一匂いのしない彼は他者に不安を呼び起こしながら、至高の香りを求めます。香りが全てであり、他者の生命すらも犠牲にします。そんな彼が手に入れた至高の香りは、何をもたらすのか。 読み進めるうち、匂いの奔流に圧倒されます。ぜひ体感してみてください。 映画化のためか、赤毛の女性が印象的な新しい表紙で店頭に並んでいました。
15 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
一気に読ませる素敵な一冊,
By 珠螺 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 香水―ある人殺しの物語 (文春文庫) (文庫)
なぜだろう、とてもグロテスクなのに全く憎めない主人公。アロマテラピー系の知識を多少でもお持ちの方はきっととても楽しめるでしょう。 現在でもおなじみの素材が出てくる上、18世紀フランスの調香社会やそれに関わる人々、日本人にはなじみのない体臭についての彼らの認識や、それにまつわる香水の社会、時代背景が良くつかめます。 ひさびさに楽しめる小説でした。
20 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
尋常ならざる傑作,
By ぱぱり (埼玉県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 香水―ある人殺しの物語 (文春文庫) (文庫)
尋常ならざる登場人物がぞろりぞろり出てくる。小さな子供や赤ん坊さえも、その存在の中に醜悪さと悪意を見出せるような書き方である。 それが不快かといえば、そうではない。 その不気味さに魅せられて、魅せられてぐいぐい読まされる小説である。 ラストの、これまた通常の範囲外という終わり方は、これまたある意味衝撃的で、読後にはしばし放心し、その後「またこんな話が読みたい」という、飢えに襲われた。 しかしこういう小説は早々お目にかかれない。 傑作である。
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