前作の『官邸主導 小泉純一郎の革命』は、全会一致の総務会を経て自民党本部が呑まなければ何も動かなかったという重層的な非決定システムが小選挙区制度による党本部への権限集中によって解体されていく中で、橋本政権から着々と強化された首相権力の基盤強化をバネに、小泉政権が一気に医療制度や道路公団さらには郵政まで変えてみせたという流れ。これを受けての今回の作品は、なぜ衆議院で2/3という絶対的な安定多数を持ちながら安倍・福田・麻生政権が三年間ほとんど何もできぬまま沈没していったのか、という問題を描いています。結論的にいえば、小選挙区制という選挙制度においてはマニフェストでしっかりと打ち出された政策でないものを実行しようとすれば、信を失うという結果が続いている、ということだろうと思います。
なぜ小泉首相は政権末期にあんな人物を後継とするような緩みが出たのかという問題に関しては、あまりにも郵政選挙で大勝したからだ、と書かれています。それまでは「抵抗勢力」という共通の敵を持っていた竹中と飯島というソリの合わない二人の司令塔に亀裂が深まったからだ、と。《憲法改正を長期目標として掲げることは自由だとしても、次の衆院選までに実行することは不可能であり、有権者として評価するすべもない》(p.107)というのはフェアな評価なのかもしれませんね。福田政権に関しては、揮発油税などの暫定税率の一時的な廃止阻止を狙った「つなぎ法案」提出を最後の段階であきらめたことが、ボタンの掛け違いだったと語っています(p.303)。つなぎ法案を成立させて与党が優位に立つことによって、初めて本格的な話し合い路線が生まれたハズだったというのは、なるほどな、と。そうなれば道路財源の修正や日銀総裁問題もバーターで取引できたかもしれない、と。