ミステリではお馴染みの〈顔の無い屍体〉
トリックの巧緻なアレンジが秀逸な本作。
跡取りとなる男子を祟りから護るため、その姉妹を身代わりにするという、男尊
女卑的な因習に支配された旧家を背景に、次々と首なし殺人事件が起こります。
跡取りの周囲には、不審な死を遂げた二卵性双生児の妹や、その事件の後に行方不明となった娘の使用人、
そして、跡取りと交流のあった男装の推理作家など、思わせぶりな属性を持つ人々が配されており、作者は、
それらの登場人物を操作し、幾重にもトリックを掛け合わすことで、過去に多くの作例がある〈顔の無い屍体〉
テーマに画期的なアプローチを行うだけでなく、真相を導き出す、スマートな手筋の構築まで実現しています。
また、本作の大部分は、事件が起きた村に住んでいた作家が、時を経て
当時を回想し、雑誌に連載した小説という体裁の作中作となっています。
この趣向には、本作の真相にかかわる、メタフィクション的トリックが仕掛け
られていて、それを読み解くためには、巻頭の刀城言耶による「編者の記」、
そして、巻末の新聞記事と、雑誌の目次といった「外枠」の部分に注目する
必要があります。
本作の結末は、一見ホラー的幕切れのようなのですが、作者は
自作解題で〈『首無』
の結末に関して色々な解釈があるようですが、真相は一つです〉とコメントしており、
合理的解決が「正解」だと示唆しているように思われます。
よって、やはり、作者が「外枠」の部分に託した
メッセージを読み取ることは必須といえましょう。
(特に、雑誌の目次の「×××発表」に要注目)