日本ホラー小説大賞短編賞受賞作家だというので、なんの気なしに購入。いやあ、なかなかやりますね、という感じ。多くの日本人が持つ原初的な恐怖感と今時の状況や小物(携帯電話とか)がうまくマッチして上質のホラー小説に仕上がっていると思う。
怪談のメッカ?京都を描いたホラーや、大阪をテーマにした小説は多いが、その間の京都寄り、長岡京市を舞台にしたというのが、またちょっと凝った感じでおもしろい。ここは長岡天神社や大きな竹林があるので有名で、5月になるとタケノコ懐石を食べさせる料亭もある。地味目の地方都市なんだけど、そう言われればホラーにはうってつけの土地柄かも。
その長岡京市のとある丘にあるほら穴、昔から言われのある穴だと知らずに結界を破って入り込んでしまった大学生3人に何が起こったか?また、偶然そこへ出向くことになってしまったこの物語の主人公まりかと、その華道師範、龍彦は?(首ざぶとん)。
深夜、自宅への帰りに放火を目撃してしまったまりか、犯人らしい人物は住宅街の中にある怪しい工場に吸い込まれてゆく。その工場ではいったい何が行われているのか?男はまりかに「ひじりに関わったらあかん」と言って消えてしまう・・・。(ひじり)
他、深夜の竹林と神社を舞台にした「ひつじを何度も掘り出す話」、携帯に現れて人を迷わす怪異「トモダチ」どれも怖いし、新しいと同時に、昔から日本で言い伝えられてきた古典的な怪談の香りもしてとてもよくできていると思う。
ここまではベタほめだけれど、ひとつ気になったところが。時々、これはいらないんじゃないかなあと思われる文章や会話が延々と続くところがあり、中だるみというか、そのせいで全体的に締まりがなくなっているような気がする。たとえば、まりかが友人たちと集まってレストランで食事をする場面があるのだけれど、メニューからの料理選びと、そしてなぜかここでムーミンの話が延々と7ページも続く。ムーミンの中でちょっと怖がられている登場人物の話が出てくるので、それが何か後の話に続くのかと思ったが、この話はここで終わりで話とは何の関係もない。阪急電車の料金表がどんなふうに描かれているのかという描写もほぼ1ページを費やして書いてあって、このあたりも思わずじりじりしてしまった。
同じ登場人物が出てくるこの連作集は作者の2つめの作品らしい。(まだ前作は読んでいないけれど)2作目でこれだからこれから先はもっとおもしろくなるのでは。良作を期待しています。