六角形の四階建てで屋上にドーム型の展望室があり、
中心に巨大な螺旋階段を配した建物――。
この情報だけからでも、直感的に舞台となる建物に施された
大仕掛けに気づく人は結構いるのではないかと思います。
しかし、本作は大トリック一発勝負といった大味のものでは決してありません。
ベタなスラップスティックコメディと若干下世話な会話のなかに
巧妙に伏線をまぎれこませ、それを周到に積み上げていくことで、
論理のアクロバットを実現させる、まさに「端正な本格」といった
作風なのです。
特に、瀬戸大橋架設に係る土地売買の疑惑といった社会派ネタの挿入の仕方や、
意外性十分な建築家の設計意図などには舌を巻きました。
また、本作でキーワードとなるのが、「80年代」と「岡山」。
せわしい現代と比べ、のどかで牧歌的な「80年代」の雰囲気は時間の流れも
ゆったりとしていて、なんだか和みます(殺人が起こるのに……w)
「岡山」を舞台にしているのもジモティーとしては、なんだか面映くもあるのですが、
知っている地名やローカルな店名が出てくると、思わずニヤリとしてしまいます。
「岡山」を舞台にしたミステリというと、なんといっても巨匠・
大横溝がいるわけですが、
著者には是非ともその衣鉢を継いで、〈岡山〉ものを書き続けてもらいたいですね。
作風は真逆かもしれませんがw
▼関連書籍
・
〈速水三兄妹〉シリーズ(我孫子武丸)…スラップスティックな雰囲気が似ています。
・
『十角館の殺人』(綾辻行人)…本作は、この作品へのオマージュ(メイントリックは対照的)。