著者の藤原氏は、元陸軍軍人であった。戦後、岩波新書『昭和史』の共著者の一人となり、日本現代史研究の第一人者となった。『軍事史』・『天皇制と軍隊』・『昭和天皇の十五年戦争』などの著書がある。その藤原氏が晩年に著したのが、本書である。
藤原氏の晩年は、彼にとって決して快いものではなかっただろう。「教科書が教えない歴史」から、これまでの戦後歴史学の成果を「自虐史観」と批判する人々が登場し、政治的影響力を振りかざす中で、藤原氏は本書を世に問うた。「英霊」として、靖国神社に祀られた死者の多くは、戦闘行為そのものによる死者ではなく、戦病死や餓死であったのだ、と。そのような死者を累々とさせたのは、他ならぬ日本軍である、と。
藤原氏は「そのことを死者に代わって告発したい」と、明言している。なぜ、そんなことになったのか。藤原氏は戦場の実態から日本軍の精神性にまで言及して、そのことを平易な形で解き明かしている。
私は、歴史の善悪を云々するつもりはない。ただし、事実は事実として受け止める必要があると考える。日本の戦死者の過半数が餓死者であった。この事実に、日本の近代の末路が凝縮されている。