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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
北村流「駄洒落文学」誕生! 笑えて、泣けて、考えさせます。 ,
By 紅孔雀 (宝塚市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 飲めば都 (単行本)
「私と円紫さん」シリーズが落語文学の新機軸なら、こちらは北村流「駄洒落文学」(?)の誕生か。そう思わせるほどに、おもしろいフレーズが満載。「さても監禁たますだれ」「裏地ミール・ホロビッツ」「あられもなけりゃあ、かきもちもない」など、大いに笑わせてくれます。まァ、題名からして『住めば都』ならぬ『飲めば都』ですから、予想通りと言えば言えますが…。また出版社が舞台なのも、うれしい限り。これが、本好き読者にはたまらない理想の職場なんですナ。しかしそんな夢の職場でも、原稿を忘れて青くなったり、葬儀の花輪の名前が間違っていたり、人事異動に一喜一憂したり、と、エピソードはまさに現実の職場そのもの。特に、花輪や人事異動の話はどんな会社にもありがちで、サラリーマン生活の長かった者としては身につまされる思いでした。 日常に潜む謎への目配りも充分で、中でも「指輪物語」の哀切、「智恵子抄」の意外性などが秀逸。随所に散りばめられた名言も読みどころで、「愛は貧乏以外の全てを越える」「恋愛はうっかり、結婚はなんとなくするもの」など、思わずニヤリとさせられます。特に気に入ったのは、主人公が純朴な恋人に対して抱く「下には下がある」という感想。ユーモラスな中にも真理を突いて鋭ドイものがありました。全編、酒と肴のオンパレードで、読後にほろ酔い加減になるのも新趣向。その食通振りも、一般サラリーマンが少し背伸びした感じなのが好ましく感じました。 あとぜひ付け加えたいのは、主人公が、恋人の両親に挨拶に出かける車中での、微妙ないさかいの場面。《免許証、持ってないくせに》と思う主人公と「あっちに着いたら丸くね」と言う彼の心のすれ違いは、まさに恋人たちの現実を描破した感があります。歳をとると、人生に完璧はなく、理想の恋人たちにも日常の小さなほころびは有るのだ、とつくづく思いますが、そんな人生の真実をよくぞ描いてくれた、と思った次第です。もちろん作者は、そんなほころびにもめげず幸せになれるのもまた「人生の真実」なのだと、読者を励ますのを忘れていませんが…。 笑えて、泣けて、考えさせる「新シリーズ」の開幕。早く、次の「飲み会」に誘ってもらいたいものです。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
楽しかった!!!,
By モトカ (大阪府) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 飲めば都 (単行本)
楽しかったーーー!!!作品との波長が妙に一致したのか、ただただ楽しかった! 文芸雑誌担当の女性編集者の仕事・酒・恋模様を綴った連作短編 激情というよりは、日常の些細な喜怒哀楽が絶妙に描かれていた 社会や時代の空気観の切り取りかたも上手かった 私はお酒を飲まないので、実際のお酒の場の雰囲気を良く知りませんが 本著で少し疑似体験できた気になれました 読書って人生を豊かにしてくれるよなと思いました (お酒はもっと豊かにしてくれるのかな???) また、お酒の薀蓄も結構多く載っています お酒は本当に種類が多く、その分だけエピソードもあるんだなと面白かったです 後、妙にウソ薀蓄がいっぱい載っているのも、なんかお得な感じがした 例えば「あられもない」の語源についてウソの説明があったり等 (ちゃんとウソのものに関しては直ぐ後にその旨が明記されています) よくもまあ、こんだけ色々考えたよなと関心してしまいました 基本、酔っ払いの失敗談的な楽しい雰囲気ですが、 ところどころでピリリとしており、味わい深い作品でした
7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
本を愛する人、本を愛する人々を幾度もこれ以上無く見事に描きぬいてきた北村作品を愛する人は、きっとこの小説に惹かれずにはいられない,
By 相楽 "(twitter:sagara1)" (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 飲めば都 (単行本)
笑った、笑った、笑った!今年一番笑えた小説。帯に「仕事を愛する酒女子必読!」などとあり「自分は酒を飲まないし、女子でもないし、仕事は……愛して…るのか?」と思いつつも、そんなことはおよそ関係の無い面白さ。 書店で見かけたなら、一章の第一節、最初の5ページだけでも目をやってみて「笑える」かどうか試してみるといいと思えます。 それが大いに楽しめた人なら、この小説全体は更に何層倍も、その期待に応えてくれる筈です。 逆にそこで反りが合わないようならば……ちょっとその人とこの作品は、相性が悪いのかも知れません。 とても分かりやすい判別法と思えます。 なお、話の進展につれ、第三章での心に痛い"飲まずにはやっていられない"エピソードを経て、物語は酒と恋------とりわけ、いかにも北村作品らしい"本を愛する男と女の心の機微"を濃やかに描くものとなっていきます。 「酔いにまかせて意図せず内面が曝け出されてしまうこと」と、「意図を練りあげて、本や版画の作者が作品を通じて自己の中の大切なものを表現すること-----それを作中のある人物曰く、「本の蔵に住むウイスキーキャット」として編集者たちがその表現を護り、引き出し、支えること」が混じり合っての妙味が、香り高く味わい深いカクテルとして読み手に差し出されます。 男と女。「気のおけない異性の同僚」と「恋人」との狭間。夫と妻。友情と各々のプライドと。作中人物と、そのモデルとなった人物ご本人と……語られるものと、秘されるものと。許せる逸脱と、どうしても許しえない漏れでた本音と。明かされる心と、あえてつき通される嘘と。 虚実皮膜のうちに泡立つ「人と人」、その「と」が当代一の巧みさで、溢れるユーモアと笑いと共に描き出されたこの『飲めば都』という小説。 是非とも、楽しみ抜き、笑い抜き、味わい抜いてみて下さい。 これは、そういう物語だと思えます。 本を愛する人、本を愛する人々を幾度もこれ以上無く見事に描きぬいてきた北村作品を愛する人は、きっとこの小説に惹かれずにはいられない筈です。 また、過去の北村作品との関係でいえば、『飲めば都』は『朝霧』収録「走り来るもの」で描かれた痛ましくも毅然とした、知と意志とに彩られたエピソードを"より明るく、笑いに満ち満ち、時に痛みや悲しみを酒と酔いに任せての大暴れに委ねつつも、明日へ向かうエネルギーに詰まった物語"に大きく広げていった小説のようにも思えます。 出来るならば、「走り来るもの」と併せて読んでみて下さい。 最後に余談を一つ。 『空飛ぶ馬』の《私》をはじめとして、同シリーズの庄司江美、『スキップ』の桜木(一ノ瀬)真理子・柳井さん・"ニコリ"島原百合香・里見はやせ、『リセット』の弥生原優子、『街の灯』の桐原道子・"ベッキーさん"別宮みつ子、『覆面作家は二人いる』の新妻千秋、『ひとがた流し』の石川千波、北村作品の単体短編の中で押しも押されぬ傑作として揺るがぬ地位を誇る名作「ものがたり」(『水に眠る』収録)の茜など、北村作品におけるヒロインや時にヒロイン以上に輝くようにも見えるサブヒロインたちは、思いを内に秘め、その秘めた勁い想いと意志の美しさとが掛け替えのない魅力となっているわけですが。 それに比して、『飲めば都』の小酒井都さんが運命のお相手とぐっとその距離を縮めたエピソードは「内に秘めた想い」という概念に収めようとどんなに願ってどんな理屈を立てようにも収まり得ない、なかなかに北村ファンとして天を仰ぎたくなるものではあって。 しかし、そんなことなど限りなくどうでも良くなってしまう、邪魔者など馬に蹴らせて殺してしまわんとする素晴らしい勢いとエネルギーこそは、正しくこの作品固有の魅力だと思えます。 この部分については是非作品の本文を参照された上で、「お前なあ……あれを読んでそういう感想になるのか」と笑ってやって下さい。
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